夏の下痢を漢方で改善するには?
夏のピークを過ぎた後は下痢が多い時期です
夏は食中毒になりやすい季節ですが、同時に冷房や冷たい物の摂りすぎによる下痢が多い時期です。冷えによる下痢には真武湯や人参湯が代表的な方剤です。
食中毒には漢方よりも抗菌薬の方が有効ですが、腹痛には芍薬甘草湯や桂枝加芍薬湯が救急の現場でも用いられており、急性の水様便・泥状便には五苓散と平胃散を併用すれば、腹痛も軽減し下痢も止まります。他にもエキス剤と抗菌薬の併用が有効な場合もあります。
漢方の世界では下痢は「泄瀉」と「痢疾」に区別しています。冷えや加齢に伴うおなかの緩さは「泄瀉」で、食中毒は「痢疾」に当たると考えていただいても良いでしょう。
下記の表のようなことが原因として考えられていますが、前述したように五苓散を服用して水分の代謝を良くすることが有効な場合が多いようです。因みに柴苓湯にも五苓散が含まれています。
クーラーなどの冷えによる下痢、軟便は下記の表の中では腎陽虚弱か脾胃虚弱と考えていただいて良いでしょうが、前回の夏バテの項を参照して下さい。
漢方の世界での下痢の原因表
症状 | 方剤 | |
外感寒湿 | 臭いの少ない急性の下痢、嘔気、腸鳴、食欲不振、 心下部の張りと痛み |
香蘇散 藿香正気散* |
湿熱中阻 | 悪臭の強い急性の下痢、腹痛、肛門部の灼熱感、口渇 | 半夏瀉心湯 黄連解毒湯 |
肝気鬱結 | 神経性の下痢、げっぷ、食欲不振 | 柴苓湯 逍遥散** |
脾胃虚弱 | 軟便~水様便、時に便秘と交互、未消化便、食欲不振、 おなかが張る、顔色が黄色 |
六君子湯 補中益気湯 啓脾湯 |
腎陽虚弱 | 明け方の下痢、手足の冷え、腰痛、夜間頻尿 | 人参湯 真武湯+六君子湯 |
*一般薬で販売 | ||
**日本では加味逍遥散 |
また、感染による下痢の場合は、特に食中毒には抗菌薬などの西洋学的治療の方が効果が高いことが多いようですが、例えば腸の動きが活発になりすぎていることによる痛みの場合には芍薬甘草湯を服用するとかなり早く痛みが軽減しますので、実際救急外来の現場でも使用されています。
1年でもっとも食中毒の多い時期とは?
夏の盛りを過ぎた頃から9月にかけてが1年でもっとも食中毒の多い時期です。
残暑が厳しいことや夏の疲れが残っていることが原因で食中毒を引き起こすようで、参考までに食中毒の特徴を書いた表を載せておきますが、これら以外にも冬に多いと言われているノロウィルスもよく見られます。
食中毒の特徴一覧表
菌種 | 潜伏期間 | 主な症状 | 主な感染源 |
カンピロバクター | 2-7日 (平均2-3日) |
腹痛、腐敗臭の水溶性下痢、血便、 発熱、頭痛など |
生焼けの肉類やペットとの接触 |
腸管出血性大腸菌 (O157など) |
3-8日 (平均3-5日) |
腹痛、水様便 時に激しい腹痛と血便 |
家畜の糞便から食品へ感染 |
サルモネラ | 6-72時間 | 水溶性の下痢、腹痛、高熱、嘔吐など | 鶏卵、鶏卵加工品、生肉 |
腸炎ビブリオ | 10-24時間 (平均12時間) |
激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐など | 魚介類の生食 |
黄色ブドウ球菌 | 0.5-6時間 | 激しい嘔吐、吐き気、腹痛、下痢 | 手で直接触った食品 |
食中毒を予防するには?
食中毒を予防するには、以下のことを注意した方が良いです。
- 肉類の生色は避ける
- 肉類は十分に加熱する
- 生肉を調理した器具の消毒を十分にする
- 生肉をつかんだ箸で他の食品を取り扱わない
- 卵は新鮮なものを食し、できるだけ生は避ける
- 魚介類はできるだけ水道水で十分に洗う
- トイレの後や、ペットを触った後には十分に手洗いをする